怪盗ブログ
何とか会話で意識を保とうとした時だった。
ふすまとふすまの僅かな隙間から、白い煙のようなものが部屋の中に入り込んでくる。
「大貴」
「動いたらしいな」
煙幕だ。
大貴は立ち上がってふすまの前に立った。
「開けるぞ」
ふすまを開け放つと勢いよく部屋に入り込み、すぐに周囲が真っ白になった。
「窓は開けるなよ」
「うん」
近隣の家に火事だと思われては困る。
おそらくそれを考えて煙幕を使ったのだろう。
「真白だけど、大丈夫?」
大貴について廊下に出た。
「何年この家住んでたと思ってるんだ。あまり離れるなよ」
「わかった」
視界は1メートル先まで。
霞む大貴の背中を追いかける。
もしかしたら既に家中この状態なのかもしれない。
掛け軸がある部屋は1階にある客間の1つだ。
客間まではかなり距離がある。
見失わないようにしなければ。
普通の状態でも迷うのに、こんな状態で一人になったら辿り着けるわけがない。