怪盗ブログ
「あたしは、負けたくない」


言ってから、はっとした。
大貴が明らかに驚きの表情をしていたから。



「その……ティアラが欲しいの」


理由を聞かれる前に、嘘をついた。



「千夏が美術品に執着するなんて珍しいな」


井乃月は盗んだものの多くを裏社会で売りさばく。
そしてまたその収益の多くを慈善活動に使う。

それが正しいのだと幼いころから教え込まれてきたから、「欲しがる」という選択肢すらあたしにはない。


嘘をついてかえって突っ込まれるかと不安になった。


けれど気にすることもなかったようで

「まあ、確かに女が欲しがりそうなもんだよな」


そう言って大貴は食器を片づけると、大学へ行った。


あたしも同じように学校へ向かった。


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