怪盗ブログ
「まだ眠いから起きたくないってさ……って何泣いてんだ」
あたしの涙はすでに止まっていた。
流れたものも佐紀子さんに拭ってもらったのだが、やはり三年も一緒にいるとわかってしまうらしい。
「……母さん。こいつすぐ泣くんだからあんまりきついこと言うなよ」
この状況を察したようで、やんわりと言った。
しかし、佐紀子さんは無反応で、険しい顔つきをして何やらぶつぶつと呟いている。
「野郎……出てってやる……」
「……?」
何だろう……怖い……
大貴はそんな佐紀子さんを見ると、溜め息をついてあたしの背中を押した。
「帰るぞ」
「え?でも……」
押されるままに靴を履いて外に出るが、まだ挨拶をしていない。
「自分の世界に入っちゃってるから、何言っても無駄」
大貴が閉める玄関の引戸の隙間から、佐紀子さんを見た。
佐紀子さんの後ろ姿は、負のオーラを放っていた。