怪盗ブログ
『……もう10時だぞ』
ブチッ
「……あああ!!びっくりして切っちゃった……!!」
咄嗟に体が「急げ」と判断したものだから、つい、うっかり……
考えるより先に指が動いてしまった。
あたしはベッドから飛び降りて、クローゼットを勢いよく開け放った。
右手が完全に自由になったので、体をフルに使って大急ぎで制服に着替える。
その最中、左手で持った携帯で『起こしてくれてありがとう』と打って送信し、机の上のスクールバッグに放り込んだ。
両手を思う存分使えるとこんなに動けるんだ、あたしは。
制服のリボンを結びながら、クローゼットの内側に備え付けられた鏡に向かって微笑んだ。
自然と出た笑みだった。
電話越しの大貴の声は、いつも通り。
機嫌が直ったんだ。
そう思ったら顔が綻んだ。
今夜はまた元通り。
いつも通りの優しい大貴に会えるから。