怪盗ブログ
ハッとして周囲を見回す。
思わず大きく後ろへ跳んでしまった。
時間が時間だけに、寮にも周辺にも人の気配は感じられなかった。
誰かに見られたということはなさそうで、ほっと胸をなで下ろす。
あたしは痛みの正体を確認した。
右膝のすぐ下にざっくりと横に3cmほど切れた傷があった。
血が滴るさまを見て顔をしかめる。
警戒しつつ痛みを感じた門まで歩み寄ると、地面には門を繋ぐように1本の線が走っていた。
細い糸か何かが埋められていたような……
そう思って、背筋が凍った。
あの勢いのまま通り抜けていたら、あたしの右足はなくなっていたんじゃ……
地面に仕掛けられていただろう凶器は既に回収されたみたいだけど。
寮を囲む雑木林を見渡す。
もしかしたら、息を潜めているのかもしれない。
「なんなの……これ」
流れて紺の靴下に吸い取られていく血を見下ろした。
空は曇り淀んで、鼻の頭に一つ目の滴が当たって砕けた。