怪盗ブログ
十星はあたしの手首を掴んだ。

「うるさいね」

そう言うと


ボキっとあっけない音があたしの手首から聞えた。


その瞬間声にならない声が出た。

痛みで震えてまともな声も出ない。



「ごめんね」

十星の眼はやはり笑っていた。


「右の手首、折っちゃったからしばらくは泥棒お休みするといいよ」



十星は自分の顔半分に巻いていた布を外した。

整った顔が露わになる。

その布であたしの左手と折れた右手を桜の枝に縛り付けた。

痛みで声をあげる。



「プロなら、声出さないでよね。見つかっちゃうじゃない」


十星はあたしの顔に手を添えると、その親指があたしの唇に触れた。
次の瞬間、十星の唇があたしのそれに触れて、そのままあたしの首を這い、痕をつけた。



あたしは痛みで目も開けられなくて、されるがままで、痛みと悔しさと恐怖で涙がこぼれた。


「千季ちゃん」

瞼を少し持ち上げる。
十星は笑っていた。

「その右手も、この痕も、千季ちゃんの為だよ」


「……な……ん」



「君は無知だ」

冷たい笑顔だった。

「お見舞いに行くね」



折れた右手の甲に優しくキスをして

「もうすぐ君の王子様が迎えに来るから、

安心して気絶しな」


途端、あたしの瞼が閉じられ十星は姿を消した。





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