怪盗ブログ




「きっと気にするから、みんな気を付けてよ!」


聞き慣れた声に目を覚ました。


「ゆー…な?」


「千夏!」



そこにはバスケ部のみんながいて、優菜があたしの顔を覗き込んでいた。




優菜の顔を見て思い出した。


「し、試合!!」
起き上がろうとしたが体が硬くて思うように動かない。



そうだ。
あたしは十星に手首を折られてそのまま……


一瞬、痛みでそれどころではなかった柔らかな感触が思い出された。


あたしが目をつぶったので優菜が心配して

「大丈夫?痛い?大貴さん呼んでこようか?」


と気遣ってくれた。


「試合、どうだった……?」



バスケ部員一同、ピースサイン。


ほっとした。


「よかった……。出れなくてごめんなさい」



「仕方ないでしょ。そんな手じゃ出られるわけないじゃない」

女子部の部長が言う。


「次の日試合だっていうのに……不注意でした」

大貴が骨折についてどう説明したのかわからないから、言葉を選んだ。


「内藤さんは悪くないでしょ。気にせずゆっくり治しなよ」
意地悪な高瀬君まで気遣ってくれるし。



本当に申し訳なくなった。
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