怪盗ブログ
「着いたぞ」
「あ、うん」
寮から車を一時間ほど走らせたところにある個人病院。
学校や寮を取り囲む風景と大差ない場所にある。
裏口のチャイムを鳴らすと懐かしい顔。
「おお、来たか」
「久し振りおじいちゃん」
院長の名前は内藤宗吉。
あたしのおじいちゃんだ。
中に入り大貴が応急処置を施した右手を診せる。
「派手にやられたなぁ。素手でこんなにきれいに折るとはなかなかやる」
「感心しないでよ。すっごい怖かったんだから!」
「大人しく折られるとは千夏もまだまだひよっこだな」
そう言って笑う。
あたしはむくれてみせる。
おじいちゃんにかかればあたしにとっての一大事もほんの些細なことになる。
生きてきた時間の差、経験の差。
笑い飛ばされて本当は少しほっとした。
「週に一度は診せに来なさい。大貴がいるから入院はいらん」
「わかった」
そう言って大貴を見る。大貴の目は窓の外を向いていた。
「大貴と少し話をしてるから、千夏は久しぶりにばあさんと話してきなさい」
「うん」
あたしは二人を置いておばあちゃんを探しに行った。