怪盗ブログ
やっぱり右手が使えないあたしを心配して、急いで用を済ませて来たに違いない。
しかし、そんな期待は振り向いてすぐ裏切られる。
振り返り見上げたあたしの目に映ったのは十星だった。
「王子様じゃなくてごめんね」
そう言って微笑む。
一瞬、心臓が止まるかと思った。
しかしそれは本当に一瞬で、微笑む十星を前に落ち着きを取り戻した。
「なんか……慣れた」
忍び込むなんて別に難しいことじゃない。
あたし達にとっては。
気配を消すことも容易いのだろう。
Aランクのこの男にとっては。
「そう?」
相変わらずの笑顔。
あたしは向きなおり、握られた手と皿を見下ろした。
「あんたは何がしたいの」
「ん?」
「あたしに何か用でもあるの?」
「あたしの腕を折ったり、わざわざ見舞いに来たり、花をおばあちゃんのところから貰ってきたり、学校にまで来て……。あたし達は、ただ同じティアラを狙っていた、それだけでしょう?」
「あんたの目的は、何」