patchwork stories
(短編寄せ集め)
「…………」
暑い。
見上げた空の眩しさに目を細めた。
夏休み。
人気のまばらな校庭を、補習を終えた数人が歩いている。
クーラーも効いていないような教室で、わざわざ自主的に学力を高めようなんて面白味のない人間達。
そしてそのウチの一人である自分。
この熱気に溶けてしまえばいいのに……。
「おーい」
「…………」
「おーい」
「…………」
「高倉 那柘ー」
「……フルネームで呼ぶな」
鬱陶しい暑さを増幅させるような暑苦しい笑顔の女。
長谷部 陽夏花。(ひなか)
面白味のない人間の一人だ。
「一緒に帰ろ」
「嫌だ」
「今日の数学難しかったねぇ」
「…………」
俺の答えをあっさり無視した長谷部が、俺の隣に並んだ。
派手な茶髪が揺れ、くりっとした瞳が俺を映す。
面白味のない人間に珍しい出で立ちと性格。
……何故、補習に出ているのかもわからない。
そして、
俺の隣にあっさりと並んでしまえるのも。
俺は一度だって許した覚えは無い。
そこに立って良いのは……一人しか居ないんだ。