patchwork stories
(短編寄せ集め)
「離れろ」
「どこを歩こうとわたしの勝手」
食えない笑顔。
血色の良いピンク色した笑顔。
それじゃない。
俺が欲しいのは……今にも消えそうな白い笑顔だ。
「高倉 那柘」
「フルネームで呼ぶな」
「花屋に用事?」
「…………」
怪訝な顔した長谷部が首を傾げ、中をのぞき込む。
……俺の隣に立つな。
俺の隣は……。
「向日葵ください」
「はっ……?」
予約していた花束を受け取る俺の隣で、長谷部は右手でピースを作っている。
二本の向日葵を受け取った長谷部は、何の躊躇いも無く俺の隣に居るまま。
俺に何か言うつもりはない。
長谷部も何も言うつもりはない。
相変わらず食えない笑顔で、向日葵を抱えて歩いている。
そうだな。
長谷部は向日葵に似てる。
華やかで明るい。
夜空にひっそりと輝く線香花火とは、違う。
でも俺の中には、
その笑顔しか入ってこない。
入れたくないんだ。
だから、
「高倉 那柘」
「……あのな」
俺の中に……そうやって入ってこようとするな。