patchwork stories (短編寄せ集め)



「……蜂蜜漬けレモンよりは成長したな」



「嫌なら食べんで良いし……」



2月14日。




世間のカップルは甘くてピンク色な雰囲気に包まれる日。





そんな日にも、わたしの隣にいるのはやっぱりヨシ。





トリュフなら形が少々崩れてもわからないって、友達にアドバイスしてもらったのに……。





わたしの差し出した箱を開けたヨシは、苦笑いを浮かべてる。





「まぁ、味は美味いよ」



「当たり前やん。売ってるチョコレート溶かしただけなんやから」




仕方無しに褒められてる感じがしてならない。



ふてくされてそっぽを向いた。





「売ってるチョコレート溶かしただけ……やのに、この様か?」




バンドエイドだらけのわたしの左手を取り、ヨシがニヤニヤ笑ってる。




「……ウルサイなぁ」




湯煎かけるだけで火傷したんやもん……仕方無いやん。




「だいたい、嫌やったら食べんでも……」



言い終わらないうちに、ヨシが言葉を被せた。




「嫌なんか言ってへんやん。嬉しいに決まってるやろ? だって俺……」




掴まれていた左手の薬指に、




「ハナのこと、好きやから」




飾り気の無いシルバーリング。



「ドーナツの指輪よりは進歩したやろ?」



覚えてたんや……左手の薬指にはめたドーナツのこと。




「もっと大人になったら、ちゃんとしたヤツ買ったるからな」




軽く重なった唇に仄かに漂ったのは、




市販のチョコレートにプラス、ヨシの愛情が加わった、





優しく幸せな味だった。


-fin-
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