SWEET×SWEET
だから、りんごをもっとおいしく食べてもらいたくて。

勇気を出して用意することにしたアップルパイ。





知りうる限りのお店を回って。





一番おいしそうなりんごを見繕って

一番きれいに焼けて

一番気に入った赤い箱に入れて





持って行ったのに。

食べてもらいたかったのに。











膝の上で、行き場をなくしている。











「りんごは、そのまま食べるのが好きなんだ」











返ってきた言葉はあっけなかった。











そういえば、アップルパイにしたらりんごは赤くなくなる、とか。

もともとおいしそうなりんごに砂糖を加える必要ない、とか。





反省もしてみるんだけど。











本当は、知ってた。











おいしそうな顔も

うれしそうな顔も





りんごを渡してるマネージャーのものだってこと。











キィ





ブランコが悲鳴を上げた。





ひどい。私が重い、ってこと?





そりゃ…





何度も練習で作ったアップルパイ、捨てるのがもったいなくてたくさん食べたけど。











悔しい。

もっと食べてやる。











中を見てもらうことすら叶わなかった箱をおもいきり開けて、口にかきこむ。





一切れ

二切れ





砂糖を入れたはずなのに。

こんなにすっぱいのはなぜだろう。
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