SWEET×SWEET
「それ、全部一人で食うのか?」











ふと、聞こえてきた声の方に目を向ける。

昔からの、なじみの顔。









「太るぞ」





「うるさい」





「腹、減ってるんだけど。くんない?」





「…いいけど」











差し出した箱からつまんだアップルパイを、さっそくほおばる顔を見つめる。











「おいしい?」





「前に食わされたものよりは。まぁ、腹減ってるってのも、ある」





「素直においしいって返してよ」





「…俺のために作ってくれたものだったら、素直にそう言うんだけどな」





目を逸らした彼。





頬が赤いのは、きっと、夕焼けのせいだけじゃない。











そういえば





何度も何度も作り直したアップルパイ。





最初に作った黒焦げのものまで文句いいながら食べてくれたお人よしだっけ。











少しかかりそうだけど。





「そのうち、りんご買ってきてあげるよ」





「俺には手抜きかよ」





「あんたのためだったらいいんでしょ?」





くそぉと顔をしかめる彼がおもしろくて。





つい、口がゆるんでくる。











空は余計に赤みを増した。





明日、赤い目にならなくて済みそうなのも、赤い夕陽を嫌いにならずに済みそうなのも、他でもない、君のおかげだから。
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