十人十色
「ケーキセットお持ちいたしました。」

その声とほぼ同時に、目の前にはおいしそうで可愛らしいイチゴのケーキが置かれた。

「ありがとう。」

そういってオーナーの顔を見ると
ケーキの横に、こおばしい香りのコーヒーが置かれた。


「灰皿おもちしますね。」

オーナーはにっこりと微笑むと、カウンターの奥へ行き、白い陶器の灰皿にするにはもったいないほどの、綺麗なお皿を持ってきた。

「ありがとう。」

再びお礼を言うと

「おタバコすってらっしゃいませんでしたよね?」

といいながら、テーブルにお皿を置いた。


「ええ、やめていたんだけど、最近少しすってしまって。」

もう私も30手前のいい大人だ
タバコをすっても何も悪い事ではないけれど
なんだかいけないような鈍感な罪悪感にさいなまれた。

「お子さんがお二人いらっしゃったら大変でしょう。」

オーナーはそういって、さりげなくカウンターへ去っていった。



このお店のこういうところが居心地がいい。




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