ピアス
【Ⅰ】
私が初めてピアスを開けたのは中学3年の冬、12月24日──好きな人と会う約束をした日の夜だった。


衝動的に空けたいと思い気付いた時にはピアッサーを買っていた。



大袈裟に包装されたホッチキスのような機械。


ピアッサーを見るのは初めてだった。

使い方を読みながら耳を氷で冷やす。

ただピアッサーを握るだけでいいのか…
そんなに簡単に体に穴を空けられるのかと思ってしまった。



もう何もためらいはなかった。





バチッ



ほんの一瞬だった。

開いた?



慌てて鏡を見ると私の左耳には確かに赤い石の着いたピアスが刺さっていた。

思わず笑みが溢れたが、次の瞬間、それ以上の快感を覚えた。



今開けた左耳が激しく脈を打ち、カッと熱くなって行くのが分かった。






私って生きてたんだ。
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