不良×依存症
大きな空に雲がかかる。
「あぁ…雨」
なっちゃんが呟くように言った。
「…俺な、雨嫌いやねん」
「え?」
「…雨は、アイツを思い出させる」
……アイツ。
あたしはなっちゃんの言葉に、目を大きく見開いた。
同時に、胸さわぎが激しくなり、鼓動は増す。
アイツって、女?
あたしは何かも分からない複雑な感情を抑えるように、唇を強く噛んだ。
「ねぇ…なっちゃん?」
「あ?」
「なっちゃんは一体何者なの?」
あたしは彼の何も知らない…。
知っているのは名前と兄弟と学校名と年齢しか知らない。
ヤンキーとか言ってからかっているけど、本当にヤンキーなのかさえ分からない。
……教えて?
「俺?」
なっちゃんが呆れたように笑った。
そして一言…。
「裏切られた囚人」
なっちゃんの瞳に、恐怖を覚えた瞬間だった…。