不良×依存症
捺来は慌てて口をとめた。
ここまで言ったら、俺も一緒に参加したと自白したようなもんじゃないか。
今までついた嘘が全て水の泡になってしまう。
「あっ!野球部だっ!陸いるかなっ!?」
腰に手をあてた明菜は、野球部員を隅々まで見ていく。
捺来は、予め被っていた帽子を深く被った。
…意味などはない。
「あ、陸ーっ!」
明菜が小さい身体をピョンピョンとはねさせる。
どうやら、探していた人間が見つかったのだろう。
「おお。明菜。悪いけど、今日は仁がいないから送らないぞー?」
野球部の固まりから、一人の声が聞こえた。
捺来は片手で携帯を取り出し、時刻を確認した。
「…21時」
捺来は軽い舌打ちをすると、携帯を戻す。
「まあ、とりあえず陸きてよぉ!」
「嫌だよー。どうせ送れだろー?見え見えなんだよ!」
近付く野球部のかたまり。
一人一人の顔が見えるようになった程近付いた時、ふと捺来の中で恐怖心が芽生えた。
…理由などはない。
「違うよー!?あたしを送るんじゃなくて、央を送ってほしいのー!」
明菜が、捺来と央をさす。