不良×依存症
それは捺来だけじゃなかった。
陸自身も今、自分が見ている少年は限りなく「アノトキ」いた少年で…。
「おーい、陸。じゃあ、俺等先帰るぞー」
「じゃあ、あたしも帰るねー」
野球部員と明菜の声で、ハッと我にかえる。
「あ、お、おう」
目線を変える事なく、片手だけあげる。
「弥生…さんですか」
誰もいなくなった事を確認すると、陸は重い口をゆっくりと開いた。
「………」
捺来は黙ったままだ。
とんでもない。
「過去」は捨てたはずなのに…。
誰も自分の事を知らない街で、もう一度人生をスタートさせたはずなのに…。
なぜ、ここにも自分の「過去」を知る人間がいるのだろう。
それが不思議でたまらなかった。
「…弥生さんも上京してたんですね。まだ"野球"やってるんですか?」
捺来は黙ったままだ。
「コイツ、家に送ってくれ。それだけだ」
捺来は、央をおろして、陸にわたした。
「弥生さん!待って下さい!」
陸が叫んだ。