不良×依存症



それは捺来だけじゃなかった。


陸自身も今、自分が見ている少年は限りなく「アノトキ」いた少年で…。



「おーい、陸。じゃあ、俺等先帰るぞー」


「じゃあ、あたしも帰るねー」


野球部員と明菜の声で、ハッと我にかえる。



「あ、お、おう」


目線を変える事なく、片手だけあげる。



「弥生…さんですか」


誰もいなくなった事を確認すると、陸は重い口をゆっくりと開いた。



「………」


捺来は黙ったままだ。


とんでもない。


「過去」は捨てたはずなのに…。



誰も自分の事を知らない街で、もう一度人生をスタートさせたはずなのに…。



なぜ、ここにも自分の「過去」を知る人間がいるのだろう。


それが不思議でたまらなかった。



「…弥生さんも上京してたんですね。まだ"野球"やってるんですか?」



捺来は黙ったままだ。


「コイツ、家に送ってくれ。それだけだ」


捺来は、央をおろして、陸にわたした。



「弥生さん!待って下さい!」


陸が叫んだ。
< 109 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop