不良×依存症
だが、今の状況をずっと傍観していた健は止めようとした手を引っ込める。
「…なっちゃん…」
「弥生さん…」
あたしと陸は、声にすらならない声をだして、なっちゃんの背中を見ていた。
だけど、なっちゃんの背中が止まる。
ほよ?
あたしは首を傾げた。
「行っちゃ、やだあーっ!」
なんと、なっちゃんの前で明菜が両手を広げて、通せんぼをしているのだ。
なっ…。
あいつ、バカじゃないの!?
「あたし達、クラスには陸みたいなスポーツバカが多いんです!」
「…だから、なんだよ!」
今、怒っているなっちゃんを止めることは誰にもできない。
「えと、つまり、ホストのわりには、イイ顔がいないんです!」
遠くからでもわかる。
明菜がなっちゃんの腕をつかみ、こちらへと引き戻してきた。
……な、なんという度胸。
明菜はきっとチキンレースで一番最初にクリアするような人間だ。
「あたしの言いたい事わかりますか!?」
「ぜっんぜん、わからへんわ!」
…あたしは、なんとなくわかる。
つまり、イケメンであるなっちゃんをホストに導入すると、こちらの株があがるという魂胆か。
……でも。
今のなっちゃんにそんな余裕…あるわけ…