不良×依存症
さっきから、疑問に思っていたことだ。
さっきは、なっちゃんによって邪魔されたけれど、やはり気になる。
陸となっちゃんに、接点なんて一個もないんだから。
「だから、言ったじゃん。俺の憧れの人だって」
「不良が憧れなの?」
陸が一息ついたあと、口を開いた。
「何でだよ。お前、本当に弥生さんの事、知らねぇのかよ」
確かにあたしは、彼の事を知らない。
知っているのは、元不良と、関西出身と、兄が桜庭海斗ってだけ。
「……でも、俺」
陸が後ろを振り返り、奥で騒いでいるなっちゃんに目を向けた。
「今は、憧れなんて抱いていない。……ムカつく」
いつも天然で悪ふざけばっかしている陸が、人をムカつくなんていうのは滅多にない。
……いや、初めて聞いた。
あたしは陸の瞳に恐怖を抱いた。
「最初は嫉妬かと思った。央が最近、様子がおかしかったのも全部アイツのせいなんだって思うと…。だけど違う。」
陸が立ちあがる。
その瞬間、机に無造作に置かれてあった時計が倒れ、時刻がもう15時という事を知った。
「負け組のくせに、デカイ態度ばっかとってんじゃねぇよ……」
「おい、こら!仁のヘルプ行ってこい!」
陸の背中に、純の拳がはいる。
「いってえええええ」
陸が、涙を浮かべ純を睨むと仁のところへと走っていった。
その後ろ姿に、胸が痛いほど締め付けられた。