不良×依存症


* *


中体連で県大会出場が決まった後、捺来には良くない噂が広まっていた。


新聞などのマスメディアを通して、捺来の才能がどんどん開花していくなか、周りにはジェラシーの渦だらけだった。



そのせいで、先輩、後輩からも、変な目で見られ、居心地が悪かった。



だけど、唯一捺来に近付く少年がいた……。


「弥生さんっ」


「え?」


捺来は振り向く。


そこには、まだあどけなさの残る中学1年生が立っていた。


「弥生さんの投げる球って、綺麗ですよね!僕もあんな球が打ってみたいもんです!」


ハキハキと喋る少年に、笑みがこぼれた。


捺来もつい、笑顔になる。


「マジで?ありがとな」


「テレビとか、新聞でも取り上げられてすげーって感じです!あーっ、俺も弥生さんみたいになりたいなあっ」


「よかったら、教えようか?」


「えっ、まじっすか!是非、お願いします!」


その日から、捺来の日課に少年に野球を教える仕事が加わった。


別に嫌じゃなかった。


今、部員に避けられている中、自分を頼ってくれる事がただ単純に嬉しかったからだ。


だけど。


どんどん捺来は、どん底へと突き落とされた。



気付いたら…



「………ッ!!」
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