不良×依存症


陸が唇を噛みしめ、下からあたしを覗き込むような瞳でそう呟いた。



忘れる…?


「何をよ?」


「…弥生さんに何言われたか知らねぇけど、あの人はお前が対処できるような相手なんかじゃねぇ…」



「……ッ」


何もいえなかった。

やはり、バレていたのだろうか。



「あの人は、もう落ちるとこまで落ちたんだ。…俺らとは別世界の人なんだよ!」


あたしは陸の言葉に、絶望を覚えた。


なっちゃんが落ちた?


落ちたのではなく……、落とされたの間違いじゃないの?


陸の言葉に呆れて、何もいえなかった。


…なっちゃんは、憧れの存在だったんじゃなかったの?



「弥生さんは…夢を捨てたんだよ…。ただの、弱者だ…」


次の瞬間、あたしは顔を上げ、陸を睨む。


「なっちゃんは弱者じゃないもん!」


怒りを露にしたあたしに、理性などはもうないようだ。


教室に入ってくるクラスメイト達が、あたしをビックリした瞳で覗く。


「しかも、なっちゃんが夢を捨てたって誰が言ったの!?なっちゃんの瞳は…ッ」



……まだ、死んでいない。



「なっちゃんは、絶対まだ野球をしたがってるんだ…」


確信はない。


けれど。
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