不良×依存症
深波さんが指した先には、蓮兄がこちらに近付くところだった。
「あ、蓮!遅いよ!」
雪さんが蓮兄の傍まで近寄り、一発蹴りを入れた。
「…痛!忘れてたんだよ…」
雪さんは深波さんを指し、今までの状況を報告している様子だった。
何か、深波さんが柄にもなく深刻な表情を浮かべているのは、何かのサインなのだろうか。
「…相談って何だ?」
蓮兄が深波さんに問いかける。
「あぁ。お前の仕事って、【無実を証明させる】事も入るのか?」
もうライブの観客はまばらになり、ほんの数人しかいなくなった。
「…ああ」
蓮兄は意外に小柄だ。
いつもはあたしと並ぶとそうは見えないが、一般男性と並ぶとやはり一目瞭然だ。
それが今、はっきりと思い知らされた。
「…あのな、俺の知り合いの弟が万引きしたってかけられてて…」
……、万引き。
犯罪じゃないの。
「…はぁ、店に訴えられてるってか?」
「いや、その奴はしてないって否定してるんだよ。まぁ、来たら分かる。」
深波さんはあたし達に手招きすると、走った。
だからあたし達も走った。
息切れするくらいに。