不良×依存症


「俺が央に言う。お前はやめんな!」


陸はわからなかった。


なぜ、野球をやめるという自分を必死になって止めるのか…。


俺の事、どうでもいいんじゃないの?

もう、後輩でもないのだから……。



「何で、俺なんかの為に…。俺、もう弥生さんの後輩でも何でもないじゃないですか!」


「……だろうな」


捺来は空を仰いだ。


「だけど、お前はいじめられてる俺に唯一話かけた後輩なんだよ」



陸の頭にふと、昔の記憶が蘇る。


【弥生さんの投げる球って、綺麗ですよね!僕もあんな球が打ってみたいもんです!】


あぁ……。


「あん時、マジで嬉しかったよ。だから…」


捺来は正面から、陸を見た。


「後輩を俺と同じような経験をしてほしくねぇんだよ」



あぁ…。

俺は今まで何がしたかったのだろうか。



これ以上、弥生さんを苦しめて何を得ようとしたのだろう。



弥生さんの気持ちを踏みにじり、愚痴を吐いてた自分。

自分が心底情けなかった。



理不尽な嫉妬をしていた自分が惨めだった。


「…でも、弥生さん俺、央に……ッ」


「央なら、俺が説得するよ。」



唇を噛みしめ、陸は捺来に1つ深々と頭を下げた。

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