不良×依存症
「野球と同じくらい…、いやそれ以上に好きなのがある」
陸があたしに背を向ける。
「うん」
「でもその好きなのはさ、野球とは違うんだ」
その陸が、野球より好きなものって…。
自惚れているのかもしれないけど、あたしなのかもしれない。
そう、直感した。
「野球では俺は本当素直になれる。そして、野球は難しいけどやりがいあるし…。でも」
陸は振り返り、あたしを真剣な瞳でみる。
そのままみつめられていたら、このまま陸の瞳の虜にでもなりそうだ。
「それは違う。難しいし、向こうには感情がある。だから、嫉妬したり、イラついたり、苦しい想いばっかすんだ」
「……うん」
ごめんって言いたかった。
でも謝られてきたら、迷惑だと陸は思うであろう。
「自分が自分をコントロールできなくなるんだ。…こんな感情、初めてだから」
「うん」
暗いからよく見えないけれど、陸の瞳に輝きがあった。
……涙だろうか。
「陸。でも今は野球が一番だよ。野球は続けてね…」
「うん。ありがとう。」
あたしは陸に向かって親指を立てたポーズを突き出した。
陸は笑いながら、あたしの真似をする。