不良×依存症
「東っていえば、央。野球すげーらしいな」
お兄ちゃんが、さっきの小学生をだっこする。
なるほど。
さっきの小学生は、お兄ちゃんの子どもなのね。
つまり、あたしの甥っ子にあたるわけだ。
「うんすごいよー。この前の試合なんてね、コールド勝ちしたんだ!」
"コールド勝ち"って陸が連発していただけで、意味は全くわからんけれど、きっとすごい事なんだと思う。
「ベスト4なんですよね、今」
お兄ちゃんの奥さんがあたしにそう言った。
言葉遣いまでも、綺麗だから、つい嫉妬してしまいそうだ。
女として、完璧じゃん。
「はい。次の試合が準決勝で、勝ったら決勝です!」
「今、注目浴びてるよなぁ。あの2年の投手」
2年の投手…。
「安西陸、ですか?」
「あぁ、そうそう。そんな名前」
「お兄ちゃん、野球詳しいんだ」
お兄ちゃんは、きっとかっこいい部類に入るだろう。
だけど。
蓮兄とは、お世辞にも全く似ていない。
顔立ちも、身長とかも含め、全部が似ていない。
……考えすぎかな。
「俺?俺、一応、小中高、大学まで野球してたからね」