不良×依存症
「マウンドってのは、ピッチャーがボールを投げるとこ。」
あ、あぁ。
なるほどね。
あたしは、そのマウンドとやらに目を向けた。
そこには、キャッチャーに向かってボールを投げている陸の姿があった。
……陸のボールも見えない。
は、はははは速い。
てか。
陸の投げる姿、初めてみたよ……。
その陸の投げる姿が今でも脳裏に焼きついていて。
陸の真剣そのものの表情。
いつも一緒にバカやってる仲とは、とても思いがたい…。
それだけじゃない。
やはり、あたしと彼は距離が遠いんだってことを思い知らされた。
陸はあたしと違って、みんなに期待されているし、みんなに愛されている。
辛いことがあっても、笑顔でいられる陸…。
あたしも彼みたいになりたい。
本当に羨ましい…。
そんなあたしは本当に彼と対照的で、何もできない、ただの人間だ。
そう思うと、悔しくて仕方ない。
「………ふぁっ」
涙が一滴…。
あたしの意識はそこで、途絶えた…。