不良×依存症
「陸…がうつってる。」
「そりゃあ、選手だし…」
あたしはさっきなっちゃんに起き上がるなと言われたけれど、陸が映っているとなると話が別だ。
上半身を起きあげ、テレビを見上げた。
「なっちゃん…戻ろうか?」
「こんな身体でいけるかよ。無理にきまっとるわ」
……無理、か。
「なっちゃんだけでも行ったら?」
「…ええよ、別に」
テレビで見るよりも、戻ったほうが絶対いいに決まっているのに。
ただでさえ、この部屋、あたしみたいに倒れた人たちが運ばれてくるからテレビの音量もないし。
「今、何対何?」
「8回裏、3対2で勝ってる」
「わっ!まじ!よかったぁ」
勝ってるんだぁ…!
去年は、惜しくも決勝戦で破れたけど、今回はいけそうじゃない!?
甲子園に、いけちゃうんじゃない!?
「安西も昨日のスランプが嘘みたいだ。あいつ独特の変化球が上手く生かされてる」
「勝てるの?」
「それはまだ分からんわ。ただこの調子でいけば勝ちは間違いないだろう…。いや…もう勝ったも同然だ」
「あっ、今のアウトだ!チェンジ!?」
テレビで東の選手が、遠くにとんだボールをそのままキャッチし、アウト。
これは、さっき酒巻から習ったもん。