不良×依存症
その声は、確かにいつもの声じゃなかった。
「…なんでこんなに必死になれんだろ…?」
なっちゃんの視線が、テレビからどんどん下がっていく。
「たかが…、野球じゃん」
なっちゃんが俯きながら、声を震わせながら静かにそういった。
「なっちゃんも、必死にやったんじゃないの?」
あたしがそう言うと、なっちゃんが勢いよく振り返る。
「はぁ…?」
「この人たちが必死になれる理由はなっちゃんだって知ってるでしょ?…同じ人生を野球に捧げた人間なんだから」
「つまんねぇよ…」
何がつまらないの?
野球…?
でも、さっきまで一緒に応援してたじゃない。
何で今頃…そんなこと…。
さっきまで、あんなに熱い瞳で、真剣に応援してたのに…。
「あっ…」
気付けば、三番打者も二番打者と同じように3ストライクでアウトになっていた。
「……アウト」
なっちゃんが絞り出したような声を出した。
その声は、触れたら今にでも壊れそうだ…。
次は、四番打者。