不良×依存症


さっき、酒巻が言っていた。


四番打者は、チームの中で一番の強打者だって。


じゃぁ、ホームラン打ってくれるかな。


あたしは両手をあわせ、両目を瞑り、必死に祈る。


……どうか、四番打者が一塁にいけますように…。



ピッチャーが、ボールを投げる。



ボールは四番打者のバットに見事、ヒット!




「高い、高い!!」


テレビからは観客の声は全く聞こえないけど、ここは一応球場だから、声はものすごく響いてきた。



みんな、あたしと同じように興奮しているのだ。



「いける、ホームランだ!」


なっちゃんの言葉が、現実となった。



ボールは外野席へと、落ちていった。


「やったぁぁぁ!やったよ、なっちゃん!」


「あぁ…!」


あたしとなっちゃんは興奮のあまり、お互いの両手を合わせた。



……あっ。


でもそれは一瞬の出来事だった。



興奮のどこかに、冷静があったように、なっちゃんとあたしは顔を見合わせ、すぐ手をバッと離した。



やっぱり、なっちゃんだって必死に応援してるじゃないか。


……てか。


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