不良×依存症
「俺は兄貴みたいに、明るくもなければ、優しさもない…。そんな奴を好きになっても意味がないだろ…」
「どうして、なっちゃんを好きになっちゃ意味ないわけ?」
なっちゃんは黙った…。
「キャー!」
観客の歓声が大きくなった。
そこであたしとなっちゃんはハッと現実に引き戻された。
そ、そうだった。
今、9回裏の試合だった…。
テレビを見ると、そこには遠く飛び上がったボールだった。
「え…っ、やだホームラン…!?」
「まだ…、まだわからへん…」
なっちゃんの声は明らかに震えていた。
怖い…。
どうしよう…。
もし、ホームランしたら…。
ボールがどんどん下に落ちていく…。
「あっ!」
ボールをレフトがキャッチした。
………ア、アウト…!!
「なっちゃん、アウト…!アウトだよ!」
「あぁ…。……これで、2アウトか」
…2アウト。
さっきなっちゃんと会話しているうちに、一回アウトしてたのだと実感した。