不良×依存症



でも今はそんなのにかまっている暇などない。


「本当に?本当にあたしの傍にいる?」


「…あぁ。いる」


「本当に!?野球やってても、あたしと同じ世界にいてくれる!?」


「同じ世界…。いるよ」


「なっちゃあーーん!」


あたしはなっちゃんに思いきり抱きついた。



「本当に?本当にあたしの事好きなの!?」


「……何回も言わせんな」


不安になってたあたし、バカみたい。


野球ばっかやってても、なっちゃんはなっちゃんだもん。



「もう一度、好きって言って」


「嫌だよ。あんな恥ずかしい言葉今まで言ったことないわ」



なっちゃんが笑った。



そして、初めてあたしを抱きしめ返してくれた。


なっちゃんは誰よりも不器用なんだ。


自分の気持ちなんかよりも、周りからの目線を気にして、素直になれない。


自分と向き合うこともできなかったなっちゃんが今。


自分と向き合い、そして、今ここにいるあたしなんかを好きだといってくれている。



そして、あたしも不器用。


なっちゃんにフラれ、陸の想いがここに向いていることをいいことに、彼を好きになろうとした。


けれど、そんなの間違っている。


< 290 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop