不良×依存症
しかしその代わり、蓮兄はすっかり桜庭海斗を毛嫌いするようになった。
「蓮兄みたいな性悪男が彼氏なら、アイドルにつけこんじゃう理由も分かるわぁ」
あたしはわざと蓮兄が怒りそうな言葉を選び、それを並べていった。
「あんな男がいるから…ッ、俺の、俺の人生が狂うんだ!」
…アレは相当重症だな。
蓮兄は恋愛にはかなり不器用で、いつも彼女さんに振り回されている。
もちろんそんな血があたしの体内にも流れているわけで…
あたしも恋愛は、不器用なのだ。
今まで付き合ってきた男なんて、実はいない…。
キスもなければ、それ以上も…。
あたしは蓮兄が落ち込んでいるすきに、バラエティ番組へとチャンネルを変えた。
その瞬間。
「れーんッ!」
家の中にはあたしと蓮兄しかいないというのに、女性らしき声が部屋中に響いた。
「雪…ッ!?」
蓮兄が素早く反応する。
無理もない…、蓮兄の溺愛する彼女の声なのだから。
あたし達の家は、やたらとでかい。
玄関からリビングまで相当離れており、ドタドタと床を走る蓮兄の彼女…もとい、雪村南さんの足音が響く。
「蓮、逢いたかったよーっ!」
そのテンションの高い雪さんの声と共に、雪さんが姿を現し、そのまま蓮兄に抱きつく。
28歳とは思えない程のテンションで、高校生といわれても誰もがそう信じるであろう。
それくらい、若く見える。