不良×依存症


しかしその代わり、蓮兄はすっかり桜庭海斗を毛嫌いするようになった。



「蓮兄みたいな性悪男が彼氏なら、アイドルにつけこんじゃう理由も分かるわぁ」


あたしはわざと蓮兄が怒りそうな言葉を選び、それを並べていった。


「あんな男がいるから…ッ、俺の、俺の人生が狂うんだ!」


…アレは相当重症だな。


蓮兄は恋愛にはかなり不器用で、いつも彼女さんに振り回されている。


もちろんそんな血があたしの体内にも流れているわけで…


あたしも恋愛は、不器用なのだ。


今まで付き合ってきた男なんて、実はいない…。


キスもなければ、それ以上も…。



あたしは蓮兄が落ち込んでいるすきに、バラエティ番組へとチャンネルを変えた。


その瞬間。


「れーんッ!」


家の中にはあたしと蓮兄しかいないというのに、女性らしき声が部屋中に響いた。


「雪…ッ!?」


蓮兄が素早く反応する。


無理もない…、蓮兄の溺愛する彼女の声なのだから。


あたし達の家は、やたらとでかい。


玄関からリビングまで相当離れており、ドタドタと床を走る蓮兄の彼女…もとい、雪村南さんの足音が響く。


「蓮、逢いたかったよーっ!」


そのテンションの高い雪さんの声と共に、雪さんが姿を現し、そのまま蓮兄に抱きつく。


28歳とは思えない程のテンションで、高校生といわれても誰もがそう信じるであろう。


それくらい、若く見える。

< 5 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop