不良×依存症
あたしは陸の腕を引っ張って、隅に移動する。
「あんたねえ、大声出すのは野球のときだけにしなさいよ!人のプライベートまで…ッああ」
「キスはしたんだ。それ以上は、相手が拒否った?つか、相手誰?」
陸はさっきの声量より、小さめにして喋る。
だからさっき人のプライベートまでつけこむな!って言ったでしょ。
「相手は言わない。」
「おい、ここまで来てそれかよ。桜庭海斗のポスターとかいうオチはやめてくれよ」
ああ…。
桜庭海斗の唇だったら、あたし嬉し死にしてますよ。
でも、桜庭海斗の弟だよ!?
いくら憧れの人と血が繋がっているからって…。
不良とアイドルの格は違うの!
あたしはなっちゃんの唇の温もりを思い出しては、身震いした。
「…羨ましいなあ。俺も早く好きな人とそういう事したいなあ」
「陸って好きな人いるんだ。野球が恋人かと思った」
「酷いなあ。俺だって恋くらいはするさ」
肩をすくめて、ペロッと舌を出す陸。
陸はお世辞にも格好いいとは言えないが、そういう仕草はちょっとキュンッとなったりする。
「だけど今は甲子園のが大事だね。ほら、格好良い姿を好きな奴に見せたいじゃん?」
…夢があるっていいね。
陸を見ていると本当にそう思う。
いっその事、あたしも蓮兄みたいに弁護士になっちゃおうか。
「陸は、野球してる時しか格好良くないもんね」