不良×依存症
「実はね、妹が工藤さんの大ファンでね、桜庭海斗の大ファンって事知っていて、親父に無理矢理頼んで貰ったんだ」
…エエッ!?
こんな入手困難で、オークションでも高値で出回ってる招待券を何で親父1つでもらえるんだよ!
…そうか。
青山さんは、大金持ちなんだな。
あたしはそう確信した。
「だからこれあげるから!一緒に待っててくれませんか?」
顔の前で両手をあわせ、片目を閉じてあたしにお願いをする。
青山さんが若干、上目線なのが気に食わなかったが、なっちゃんよりも海斗の方が大事だから…。
「分かりました。今日ですね」
なぜ、あたしは桜庭海斗の事となるとこんなにも扱いやすい人間になるのだろう。
ある意味、我ながらすごいと思う。
この前だって嫌々行ったなっちゃんの事件も、蓮兄の【桜庭海斗の生写真持ってるけど…】の一言でやる気ボルテージが急上昇したんだから。
っていうか、生写真貰ってないよ!
今日、弁護事務所まで行って蓮兄から貰おう!
「じゃあ、校門で待ってる」
青山さんが軽く会釈すると、あたしも深々とお辞儀をした。
顔を上げて、絶え間なく光り続けるあたしの瞳だけを始め、全てのものが輝いていた。
「…お前、キモッ」
後ろから落ちた声に反応して、あたしは振り返る。
そこにはドアにもたれ、呆れた瞳をこちらに向ける陸が立っていた。