不良×依存症



「……あ!!」


あたしは大声で、そう叫んだ。


自分の声なのに、壁に当たりはね返ってきた声が痛い…。


あたしでも痛い声なのだから、クラスメイトはもっと痛かったに違いない。



「うるせーな」


酒巻が耳を掻きながら、のん気に欠伸をする。


そんな酒巻にかまう暇なく、あたしは鞄をゴソゴソとあさりまくる。


「あったー!」


あたしはグシャッとなった茶封筒を握り締め、中身を取り出す。


その中身とは、昨日、青山さんが親父を使って手に入れた生放送歌番組のチケットだ。


日付を見ると、今週の土曜日だ。


しかも今、気付いたのだが、ペアチケットだ。


「…学園祭の話を決めてるどころじゃなかった」


一人で行くのも嫌だし。


雪さん連れて行くって考えが一番手っ取り早いが、蓮兄の事も考えるとそれはダメだ。


陸…は?

いや、陸は甲子園を控えている。


…なっちゃん?


……なっちゃんを連れて行こうかな。

なっちゃん、確か海斗とは仲はそんなに良くない雰囲気だからな。


あ、でも、兄の格好良い所をなっちゃんに見せるってのもいいかもしれない。


少しはあのなっちゃんも、あ、俺の兄貴格好良いって思うかもしれない。


それほど、海斗には魅力があるのよ!

あたしが一人で海斗の事を語り続けている中、もう出し物は決まったようだった。


明菜曰く、【ホスト】だそうだ。
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