先生愛!~もう1つの片思い~
「私、何度も彼を諦めようとしました。やっぱり私も、親的には早く結婚してほしい位の年齢になりましたし…。」
そう言って彼女は、向きを変えて、ゆっくり歩き出した。
「今迄何度も何度もお見合い、してきました。そしたらいつか、彼を忘れられる、素敵な人が見つかるんじゃないか、って。でも、やっぱり駄目でした…彼を超えられる人なんていませんでした…。」
俺は少し距離を置いて静かに後ろをついて歩いた。
「それに…こんなことしてる自分が辛くて、情けなくて。自分の気持ちを偽りながら、更に彼を裏切るような事をしている自分が嫌で嫌で…でも、現実と向き合う勇気もなくて。
その板挟みの合間で、悩んでました。」
ふと、彼女は足を止めて空を見上げた。
「でも、私決心しました。今迄のお見合いを通して、一段と彼の大切さを感じましたし…尾上さんに大切なこと、気付かされました。本当に…ありがとうございます…。」
「いえ、そんな……。」
同じように見上げた空の端に、人影が見えた。