先生愛!~もう1つの片思い~
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桜咲き乱れる季節がやってきた。
今までの厳しい寒さが嘘のように緩み、
桜の蕾は待ってましたとばかりに微笑みをこぼして綻びだした。
そんな桜を
今年の俺は今までとは違った場所から見ている。
今まで、部屋の窓から見下ろしていた、あの桜とは別の、
若葉総合記念病院の新たな配属先から見える、桜の木を今は見ている。
相変わらず変わらないのは、毎朝のコーヒー、そして
お気に入りのクロワッサン。
前任の病院は前年度いっぱいまで精一杯働いた。
この短期間の間に少しでも、最後の最後まで部長から何かを得ようとした、残り数ヶ月でもあった。
温かい職場の同僚達に見送られながら、
こうして俺は、新たな病院で、新たな患者を診察することになった。