先生愛!~もう1つの片思い~
数分後、彼女が書類を手に部屋へ戻ってきた。
冷静を装う、装う……
俺は、パソコンに目を向けたまま、呪文のように唱えた。
「あのっ!!コピー…出来ました…」
彼女は、コピーしてきた書類をかすかに震えた両手で俺の方に差し出した。
「おっ,サンキュ。」
そういって、俺はごく自然を心がけながら、書類を受け取った。
大丈夫、良い感じ。ぎこちなくない!多分……
俺はもはや内心どきまぎしていた。
その時、
「あのっ…!!先生……私の事…覚えてたりしますか…?」
柊しおりは、とんでもない、爆弾を俺にめがけて落とした。いや、投げつけた。
俺は一瞬固まったまま、動けなかった。
ど、うし…よう……
とりあえず、右手に握ったマウスを無意味な起動を描かせながら
パソコンに向かったまま、
「いや…知らないが…。すまない。」
と言うのが精一杯だった。
その後、しばしの無言が俺たちの間に流れた。
恐る恐る少し顔をあげて、目の前に立っている白衣姿の彼女をのっそり盗み見した。
すると、今にも泣きそうな顔で俯いていた。
おいおい……それ、反則。
俺は、気まずい雰囲気をどうにかしようという気持ちと、
彼女のそんなかおを見て、半ば我慢できず、苛めたくなった気持ちで、俺は、気付くと椅子から立ち上がって、彼女の方に歩き出していた。
正確には、前者の気持ちが1割、後者の気持ちが9割だったことをこっそり告白、懺悔しよう。
そして俺は、
「…本当に忘れると思ってんの…?」
と言いながら、彼女を壁に追いやっていた。
意識がはっきりしたとき、彼女が目の前にいて、そして自分の言動がもう取り返しのつかないことになっていて、どうしたものかも俺は、最大限に焦った。