先生愛!~もう1つの片思い~


「何で勝手に話進めちゃうかなあ?」

俺は、電話を持っていないほうの手で口を触りながら言った。

「相手の方、とっても美人な方よ!お父さんの知り合いの娘さんらしくてね!」

おふくろは俺の気持ちはそっちのけで続けた。

「なんでこう誰もかれも俺の気そっちのけで進めんだよ……」
小さな声で独り言のように呟いた。

「あのね、お父さんもあ母さんも大輔が心配なのよ。仕事もいいけど、そろそろちゃんと家庭を持ったほうが、もっと頑張れるし、充実した生活が送れるはずよ!俊輔も真子ももう結婚してるんだし!あなたも早く孫の顔を見せてよね!」

「俺は俺。兄さん達が結婚してようがどうだろうが俺には関係ないだろ。」
呆れてもうぶっきらぼうにこたうるほかなかった。
俊輔とは俺の兄貴。四歳年上で、新聞社で働いている。真子とは俺の1つ下の妹で、病院食の調理師をしているが、こないだ結婚したのだ。

「また詳しくは後々話すわ。写真が届いたら連絡ちょうだいね。」

結局おふくろは自分のペースを死守したまま、電話を終えた。


困ったもんだな……

白衣から腕を抜きながら俺は、途方に暮れた。



とりあえず、写真が来たらもう一回おふくろに電話してなんとしても断ろう。

俺は、固く決心した。



もしかしたら、この話をうけたかもしれない。
もしも、今、彼女が、ここにいなかったならば。
ここで一緒に働いてなかったら。

彼女への想いを一生秘めたまま、落ち着こうと思ったかもしれないが、
いくつもの偶然が重なって、俺達は、再会した。
これは、何らかの運命だったのだと。神様からの贈り物だと、俺は、思っている。
そんなチャンスを無駄にできるものか。
諦められるものか。

そんな今まで感じたこともない熱い想いが胸を焦がした。

彼女は、俺のことを覚えててくれたみたいだ。
初対面の時、俺を見た時の表情。今でも鮮明に思い出せる。
彼女は俺のことをどう思ってるかはわからないが、でも、覚えててくれたのは本当に嬉しかった。

だから、俺は、このまま引き下がるわけにはいかない。




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