先生愛!~もう1つの片思い~
おふくろの見覚えのある繊細な字で、
「以前話してたお見合いの相手の方の写真、送ります。また顔合わせの日を決めるから、手紙が届いたら、電話してね。」
と書かれた便箋が一枚。
そしてそれとともに、えんじ色の着物に、美しい模様の織り込まれた帯をつけた女性が椅子に座って優しげに微笑んでいた。
確かに美しく、感じの良い人だ。
色白で、華奢な感じがしつつも、頭のよさそうな、そして育ちの良さそうな感じがどこからともなく感じられた。
確かにな。
何もなければ、俺もこの当たりで覚悟を決めて、腰を据えたかもしれない。
しかし、今の俺には、またとないチャンスが与えられたのだ。
本当に好きな人が
好きだった人が、こんな近くにいる。
俺の鼓動が聞こえてしまってるんじゃないかと、いつも不安になるくらいに俺の胸は忙しなく音を立て、彼女は俺の助手をする。
この気持ちを言えたなら、どれだけ楽だろうか。
写真をもう一度一瞥し、机の上に封筒と重ねて置いたあと、クロワッサンを買いに売店へ向かった。