先生愛!~もう1つの片思い~

――――

「そうだ、柊さん。」

クロワッサンを1つ、食べ終えた俺は、椅子をギシギシいわせ、手帳を片手に開きながら、彼女の名を呼んだ。
こういうのも恥ずかしいことだし、こんな事実認めたくはないけど、今になっても彼女の名前を呼ぶのはまだ少し緊張する。
何気なく、自然に呼べてるだろうか?声は震えてないだろうか?……考え出すときりがない。
そういう考えが、よりこの発せられるセリフをぎこちなくきてしまっているのではないかと胸が騒ぐ。

「はい。」
白衣を着た彼女は、いつものように、鈴の音のような美しくも可愛らしく、清らかで可憐な声で返事をしてこちらを向いた。

「今日は午前中で終わりだ。午後からオペが入ってるから。仕事、切り上げていいよ。」

そういって、俺はオペの準備、打ち合わせをするために、椅子から立ち上がって、部屋をあとにした。

「わかりました!ありがとうございます!お疲れ様でした〜!」
という、彼女の声を背に受けながら。




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