先生愛!~もう1つの片思い~
―――午前9時。
手術開始の時刻。
「では、今日はよろしく。」
部長は静かに呟いた。
ドアが開いて、手術準備室から麻酔にかかって、酸素マスクをつけている彼女が入ってきた。
「柊しおりさん、17歳です。お願いします。」
付き添いの準備スタッフがそう告げて、連れてきた。
あの初めて見た時の天使の寝顔。
また見られた。
何だか落ち着く。
それと同時に、誰にも見られたくない、
俺だけが知っていたいとも思った。
…何を考えてんだっ…俺…。
口の中に気道確保の為のチューブが入れられた。
何だか…可哀想だ。
無性に、守ってやりたくなった。
執刀は俺じゃないけど、部長の助手を精一杯やり遂げる事で、彼女を救ってやりたいと思った。
俺が医師になった理由。
――人を助けたいから。
初心に帰ることができた。
「では、今から左内側筋内血管腫摘出手術を始めます。」
いよいよ、始まった。