先生愛!~もう1つの片思い~
もと来た道を戻る俺はふと何かの気配を感じる。
後ろを見てみろ、と言っているかのように。
俺はその感覚に逆らわずに、ゆっくりと振り返った。
もう大分遠く、小さくなった彼女の部屋から、彼女が手すりに懸命にすがりつきながら出てきた。
彼女は毎日、リハビリを頑張っていたのだ。
彼女の懸命な姿を見て、涙が出そうだった。
必死にこらえ、上を見上げた。
彼女は一生懸命、自分の為に頑張ってんのに、俺は何やってんだろうな…。
情けなさと、彼女を何日かぶりにみられた嬉しさ、
色々な気持ちが溢れて来る。
もし、もう少し長い間あの場に居れば彼女と会え、話せていたのだろうか?
彼女を一目見られただけで奇跡なのに、俺は更なる欲を抱いていた。
欲深いよな、人間って…
明日は…笑顔でさよなら出来るだろうか?
彼女の退院を心から祈ってやれるだろうか…?
彼女を目に焼き付け、不安を胸に自分の部屋へと足を進めた。