レンタるな恋人
緊急避難的に俺は琉菜とカラオケボックスに入る

ここならいくら泣いても平気だろうと思って



目を赤くした琉菜が深々とお辞儀をした

「すみません
あんなとこで泣くなんて」

「別にいいけど」

俺は歌手別の分厚い本に手に取った


「…で、何でうまくいってねえんだよ」

賭けに勝つために飯田はあんたを誘ったんだ
もともと上手くいくはずがねえんだよ

あんな馬鹿な男なんてさっさと諦めちまえよ

面倒くせーだろ
あんな馬鹿男

「私……恋愛ができないんです」

「はあぁ?」

「…ってなりますよね、やっぱり」

琉菜ががっくりと肩を落とした

なんで恋愛ができないんだよ

悪いの飯田だろ?

琉菜のせいじゃねえっつうの


「恋愛は『する』とか『しない』っていう感覚じゃねえと思うけど
相手を想い、相手から想われる
一緒にいたいから付き合う
想いが重ならないから別れる
失恋する
そういう行為の総称を恋愛って言うんじゃねえの?」

「でも…私は…できないんです」

「何が!」

苛々するなあ
さっさと言いたいことを云えよな

「…せっくすが」

琉菜が小さな声で呟いた

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