レンタるな恋人
「八時か……今日は飯食ったら帰るか」

俺は腕時計を確認した

「美容院代は…」

くたびれた鞄の中からがさごそと財布を出しながら琉菜が言ってきた

「もう払ってある
それにこれも料金のうちだよ
最終日に貰う50万円の中に含まれている」

「そうですか」

「それと俺と話す時は敬語はなし
何のためのプログラムだよ」

琉菜の頭を撫でようと手をあげたところで俺は拳にかえた

琉菜は触れ合いには慣れていない

安易に触って、琉菜を緊張させてはいけない

「明日は化粧品屋と服選びだ
金のことは考えなくていいから
料金のうちだ」

俺はほほ笑んだ

「髪型の維持って大変だって聞くけど
ブローを頑張れよ」

「はい」

「ところで髪、明るくしちゃったけど
職場は平気?」

「はい、少しくらないなら」

「そっか、よかった」

…って知ってるけどさ
同じ学校にいるんだし

琉菜よりもっと明るい茶髪にしている先生も知ってるし


それくらいの明るさ
どうってことない

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