レンタるな恋人
「恋汰さんも?」

「え?」

俺は聞こえないふりをした
その質問には答えられない

俺だって仕事だから

相手が望む格好をするし
相手が望む恋愛をする

初めて名前を呼ばれたのに
そんな質問すんなよな

次は俺が答えられる質問にしてくれ


「玲にできなくて悪かったな」

俺が謝る
俺のせいじゃないけど

「ううん、恋汰さんで良かった!」

琉菜が明るい顔で微笑んだ

えっ?

俺は琉菜から視線をそらした

心臓を鷲掴みされたかと思った
胸の奥が痛む

琉菜の笑顔がまぶしい

…つうか今のは毒な気がする

仕事だ
これは仕事だから!


「『さん』じゃないだろ」

俺はかろうじて言葉を口から吐き出す

「あ…えっと恋汰……くん」

「おい!」

「だって緊張する」

「あ、そうだ
彼氏の写真は?」

俺が話題を変える

琉菜は鞄の中から写真を出した

職員旅行の集合写真の一枚だった
その中にいる飯田に指をおいた

「この人です」

「そう、わかった」

「え? もう?」

「ああ、記憶力はある」

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