レンタるな恋人

『岩永の雰囲気、変わったよな！』
『ああ、変わった、変わった』
『恋でもしてるんじゃねえの？』
『女は恋をすると可愛くなるって言うじゃん？』


教室内での会話が俺の耳に入ってくる

『冬馬　郁巳』として椅子に座りながらも、耳は教室内の会話に集中していた

だろ？
俺のおかげなんだぜ

俺が岩永　琉菜を綺麗にしてるんだ


思わず俺の口元が緩みそうになる

手に持っている文庫本に目を戻すと、手に力をいれた

指には指輪はない
学生鞄の中にしまってある

琉菜も学校ではしてなかった

ま、できないだろう
教師だし

上司の目もあるしな

それに飯田になんて言われるか
わからねえよな

飯田はどんな風に琉菜を見ているのか


自分のために綺麗になった…とか思ってるんだろう

そう考えると苛つく

飯田のためなんかじゃない
琉菜は琉菜のために、生まれ変わろうとしているんだ


…でも飯田とセックスができるようになるため…かもしれないな

綺麗になって己に自信がもてるようなったら
きっとトラウマと向き合える

トラウマな自分を愛し、受け止められるようになったら
必ず乗り越えられる


…んで乗り越えられたら


やっぱ
飯田とヤるのだろうか？


おそろいの指輪を持っているのは俺なのに、な

俺はレンタルな身分だから琉菜を抱けない