レンタるな恋人
好きな気持ちを、琉菜に言えたらどんなに気が楽になるのだろう

互いにゴールドのリングを身につけているのに、期間が過ぎれば赤の他人になってしまう

距離があけば、俺の気持ちは落ち着くのだろうか

琉菜を忘れて、次の女性に愛を与えられるのだろうか

普通に仕事をこなしていけるのだろうか

姉の動かす駒の一つに戻れるのだろうか?




俺は……姉貴の駒


この気持ちは俺の感情なのに
俺の感情は無視される

「恋汰、どうしたの?」

「え?…ああ、何でも……ない」

俺は心配そうにのぞきこんでくる琉菜に、慌てて笑みを作って見せた

「明日のプランなんだけど」

俺は琉菜から手を離すと、鞄の中に入っている紙を一枚取り出そうとした

「あ……」

俺は鞄を道端に落としてしまった

琉菜が俺の鞄から落ちた手帳を拾った

「え…これって…」

琉菜が手なれた手つきで、手帳を捲った

「それは……」

見ちゃだめだ!…という間もなく、学生手帳を開いてしまった

『冬馬 郁巳』という名前と、写真があらわになった

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